コロナなどで1週間ランニングを休んだあと、「体は軽いのに力が出ない」と感じたことはありませんか?最新のスポーツ科学では、短期間の休養によるパフォーマンス低下は2〜6%程度とされ、再開後1週間ほどで回復するといわれています。800m〜5000mランナーの実感をもとに、回復のメカニズムと戻し方を解説します。
はじめに:1週間休んだだけなのに、力が入らない?
コロナ感染で1週間ほど練習を休んだあと、再開すると「体は軽く回るのに、筋力が落ちた気がする」という感覚を覚えました。
陸上競技では誰もが経験する“練習ブランク”。
たった数日でも、「もう戻らないのでは」と不安になるものです。
しかし実際には、短期間の休養で落ちる走力は意外と小さく、回復も早いことが科学的に示されています。
今回は、800m〜5000mを中心にトレーニングしている筆者の実感をもとに、「短期デトレーニング(練習休止)」の科学を整理します。
1週間休むとどのくらい走力は落ちるのか?
代表的なスポーツ科学の研究をまとめると、以下の通りです。
| 能力 | 低下幅(1週間休み) | 主な要因 |
|---|---|---|
| VO₂max(持久力) | 2〜6% | 血漿量減少・心拍数上昇 |
| 筋力 | 約5% | 神経出力の低下 |
| ミトコンドリア活性 | 約10〜20% | 酵素活性低下 |
| 神経的スピード | 軽度低下 | 協調性の鈍り |
主な文献:
- Mujika & Padilla, Sports Medicine (2000)
- Neufer, J Appl Physiol (1989)
- Coyle et al., J Appl Physiol (1984)
これらの研究はいずれも「エリート持久系アスリート」を対象としており、
1週間の休養で走力が2〜6%低下し、再開後1週間でほぼ回復という結果が共通しています。
コロナ明けの休養は「ただのブランク」とは違う
感染による休養は、単なるデトレーニングとは異なります。
ウイルス感染後は筋肉や心肺に炎症が残り、自律神経も乱れやすくなります。
- 安静時心拍数が+5〜10拍上がる
- 同じスピードでも心拍が高く出る
- 呼吸筋(横隔膜や肋間筋)に疲労感が残る
つまり「走れる感覚はあるのに、数値的にきつい」のがコロナ明けの特徴。
焦って強度を上げると、かえって回復が遅れます。
筆者の実感:体は軽いのに、力が入らない理由
私は高校時代に400m〜800mを中心に取り組み、
現在は5000mを軸に、800m〜ハーフマラソンまで対応できる練習をしています。
再開初日は「体は軽い」「回転は良い」感覚がある一方で、
明らかにハムや臀部の“押し込み”の力が弱い印象でした。
この「力が入らない感覚」は、文献的には**神経的出力の低下(約5%)**に相当します。
スプリントやドリル練習を数回入れると、3〜4日で改善していきました。
回復までのロードマップ(実践編)
| 期間 | 練習内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 再開1〜3日 | ジョグ40〜60分 or ゆるいビルドアップ走(LT−10〜15秒程度) | 血漿量・代謝系の再起動 |
| 4〜6日目 | 200〜400mレペ(R走 or I走を軽めに) | 神経的スピードの回復 |
| 7日目以降 | 通常練習(LT走・1000mインターバルなど) | 持久力とスピードの統合 |
おおよそ10日で完全復活が目安。
心拍数が以前の水準に戻れば、走力も戻ったと考えて良いでしょう。
まとめ:1週間の休みは「退化」ではなく「リセット」
- 1週間休むと走力は2〜6%低下するが、再開後1週間で戻る
- コロナ明けは炎症や自律神経の影響もあるため慎重に
- 「心拍が高い間は無理をしない」が鉄則
- 体感的なブレはあっても、数値的にはすぐに回復する
短期の休養は、むしろ神経や筋のリフレッシュにもつながります。
焦らず段階的に戻していけば、以前より良い感覚を得られることもあります。

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