中高年ランナー必見!ランニングと変形性膝関節症

「ランニングを続けると膝が悪くなる?」

これは中高年ランナーにとって気になる問題です。特に変形性膝関節症(OA)のリスクを心配し、「走るのをやめた方がいいのでは?」と悩む方も多いでしょう。

しかし、最近の研究では「レクリエーショナルランニングはOAのリスクを必ずしも高めない」ことが示唆されています。今回は、文献をもとに、ランニングと変形性膝関節症の関係について詳しく解説します。


1. 変形性膝関節症(OA)のリスク要因とは?

まず、OAのリスク要因を理解しましょう。

【参考文献①】

Blagojevic, M., Jinks, C., Jeffery, A., & Jordan, K. P. (2010).

“Risk factors for onset of osteoarthritis of the knee in older adults: a systematic review and meta-analysis.”

Osteoarthritis and Cartilage, 18(1):24-33.

このシステマティックレビューでは、以下が主要なOAのリスク因子として挙げられています。

✅ 年齢:加齢による軟骨の摩耗

✅ 肥満:膝関節への負担増加

✅ 膝の外傷歴:半月板損傷や靭帯損傷の既往

✅ 遺伝的要因:家族歴の影響

➡ しかし、「ランニング」はOAの独立したリスク因子として明確には認められていません。


2. ランニングは膝に悪いのか?最新の研究から検証

「走ること自体が膝OAを引き起こすのか?」

この疑問に答えるため、以下の研究を見てみましょう。

【参考文献②】

Burfield, M., Sayers, M., & Buhmann, R. (2023).

“The association between running volume and knee osteoarthritis prevalence: A systematic review and meta-analysis.”

Physiotherapy in Sport, 61:1-10.

このメタ分析では、レクリエーショナルランナー(趣味で走る人)は非ランナーと比較して、膝OAのリスクが有意に高くないことが示されました。

➡ つまり、「適度なランニング」は膝に悪影響を及ぼさない可能性が高いのです!

一方で、エリートレベルの競技ランナーではOAのリスクがやや高くなる傾向があることも示唆されています。これは、高強度・高頻度のトレーニングによる影響が考えられます。


3. ランニングは膝の健康に良い?

むしろ、ランニングが膝OAを予防する可能性すら指摘されています。

【参考文献③】

Voinier, D., & White, D. K. (2022).

“Walking, running, and recreational sports for knee osteoarthritis: An overview of the evidence.”

European Journal of Rheumatology, 2022 Aug 9.

▶︎ PubMedリンク

この研究では、適度なウォーキングやランニングが以下のようなメリットをもたらすと報告されています。

✅ 軟骨の栄養供給が促進される

✅ 関節周囲の筋力が向上し、負担を分散

✅ 体重管理により膝への負担が軽減

➡ つまり、適度なランニングは関節の健康維持に貢献する可能性があるのです!


4. 既存の変形性膝関節症(OA)患者でも走れるのか?

変形性膝関節症(OA)を抱える方々にとって、ランニングが可能かどうかは重要な関心事です。この疑問に対し、以下の研究が参考になります。

大見 武弘. “ランニングが可能な変形性膝関節症患者の身体機能と歩行の特徴.” 日本臨床バイオメカニクス学会, 2021年11月.

この研究では、ランニングが可能なOA患者とそうでない患者の身体機能や歩行特性を比較しています。結果として、ランニングが可能なOA患者は、歩行中の膝最大伸展角度が大きく、10m歩行速度が速いことが示されました。つまり、膝をしっかり伸ばす能力と速い歩行速度が、OA患者がランニングを行う上で重要な要素であると考えられます。

さらに、運動療法が変形性膝関節症の症状改善に寄与することを示す研究もあります。例えば、順天堂醫事雑誌に掲載された記事では、適切な運動負荷が炎症抑制や基質合成に働くことが明らかにされています。 

これらの研究から、変形性膝関節症を持つ方でも、適切な運動能力とトレーニングを行うことで、ランニングが可能となる場合があることが示唆されます。ただし、運動を開始する際は専門家と相談し、個々の状態に合わせたプログラムを組むことが重要です。


5. 中高年ランナーのための「膝を守る」実践ガイド

① 適度なランニング量を維持する

• 週3~4回、1回30~60分程度のランニングが推奨される

• 無理な長距離・高強度のランニングは避ける

② 筋力トレーニングを取り入れる

• 大腿四頭筋、ハムストリングス、股関節周囲筋を鍛えることで膝の負担を軽減

③ 適切なシューズを選ぶ

• クッション性が高く、安定感のあるシューズを使用

④ 違和感を感じたら休養をとる

• 痛みがある場合は無理せず休む

• 必要に応じて整形外科医の診察を受ける


結論:適度なランニングは膝の健康にプラス!

最新のエビデンスを総合すると、レクリエーショナルランニングは変形性膝関節症のリスクを必ずしも高めるものではなく、むしろ関節の健康に良い影響を与える可能性があることが示唆されました。

しかし、過度なトレーニングや誤ったフォームによる膝への負担は、OAのリスクを高める可能性もあります。適切なランニング量と筋力トレーニングを取り入れながら、長く走り続けられる工夫をしましょう!


参考文献

1. Blagojevic, M., Jinks, C., Jeffery, A., & Jordan, K. P. (2010).“Risk factors for onset of osteoarthritis of the knee in older adults: a systematic review and meta-analysis.” Osteoarthritis and Cartilage, 18(1):24-33.

2. Burfield, M., Sayers, M., & Buhmann, R. (2023).“The association between running volume and knee osteoarthritis prevalence: A systematic review and meta-analysis.”Physiotherapy in Sport, 61:1-10.

3. Voinier, D., & White, D. K. (2022).“Walking, running, and recreational sports for knee osteoarthritis: An overview of the evidence.”European Journal of Rheumatology, 2022 Aug 9.

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