ディズニーランドの「ピーターパン空の旅」が好きなので、今回はその原作であるJ・M・バリーの『ピーター・パン』(岩波少年文庫・厨川圭子訳)を読んでみました。
子どもの頃から絵本やアニメでは何度も触れてきた作品ですが、原作を通して読むのは今回が初めてです。

読み終えて最初に思ったのは、
「これは子どものためというより、大人が読むと面白い作品だ。」
ということでした。
子どもの頃から私はピーター・パンにあまり憧れませんでした。
空を飛べる少年という設定は魅力的なのに、なぜかヒーローには見えなかったのです。
今回原作を読んで、その理由が少し分かった気がしました。
ピーター・パンは「永遠の少年」ではなく、「成長しない少年」だった
ピーターは成長しません。
それだけではなく、
- 約束を忘れる
- 経験を積み重ねない
- 過去を振り返らない
- 人の死にも執着しない
という存在として描かれます。
学生時代、『トリビアの泉』で「ピーターは成長した子どもを殺している」という話を見た記憶がありました。
今回改めて岩波少年文庫(厨川圭子訳)を読むと、107ページには、
「子どもたちが大きくなりそうだと、これは規則違反なので、ピーターに間引かれてしまいます。」
という一文がありました。
原文は Peter thins them out.。
「殺す」とまでは書かれていませんが、「間引く」という曖昧な表現だからこそ、ピーターという存在の不気味さを感じます。
一番印象が変わったのはフック船長
ディズニー版ではコミカルな悪役という印象でした。
ところが原作では、普通に恐ろしい海賊です。
部下にも容赦なく、子どもたちも本気で殺そうとします。
しかし読み進めると、意外にも彼が一番人間らしく見えてきました。
フック船長は、
- 礼儀を重んじる
- 品位(good form)にこだわる
- 涙を流す
- 老いと死を恐れる
という人物です。
時計ワニに追われる姿は、「時間」に追われる大人そのもの。
最後まで品位を失わなかった姿は、とても印象に残りました。
子どもの頃は単なる悪役でしたが、大人になって読むと、むしろフックの方に人間味を感じます。
ウェンディこそ主人公なのでは?
タイトルは『ピーター・パン』ですが、読み終える頃には
「主人公はウェンディでは?」
と思うようになりました。
ウェンディは最初から母親役を買って出る少女です。
一方のピーターは、お母さんを求めています。
つまり、
- ウェンディは大人へ向かう人
- ピーターは子どものままでいたい人
という対比になっています。
母親になろうとする人は、当然ながら成長していきます。
一方で、お母さんを求め続けるピーターは、大人になることができません。
最後まで読むと、この作品は「永遠の少年」への憧れではなく、「成長すること」を描いた物語だったように感じました。
ジョージ・ダーリング氏は立派な父親だった
序盤のジョージ・ダーリング氏は、見栄っ張りで空回り気味。
ナナを追い出したときは、「なんて頑固なお父さんなんだ」と思いました。
しかし最後には自分の非を認め、ロストボーイズまで受け入れる度量を見せます。
反省し、変わることができる。
読み終える頃には、ピーターよりもずっと立派な大人に見えました。
ナナがかわいすぎる
今回のMVPです(笑)。
乳母犬として子どもたちの面倒を見て、家族を支えるナナ。
こんな犬が一匹いたら、子育てもずいぶん助かりそうです。
ティンカー・ベルの名前にも意味があった
“Tinker” は金属細工や修理をする職人という意味です。
ティンカー・ベルは単なる名前ではなく、「ものづくりをする妖精」という意味だったのですね。
ディズニー作品で工作や発明が得意なのも納得しました。
また「ポーポー」が出てきた
『ジャングル・ブック』に続いて、「ポーポー(pawpaw)」という単語が登場しました。
私は果樹としてポポーを育てているので思わず反応してしまいましたが、英語では地域によってパパイヤなど別の植物を指すこともあるそうです。
思わぬところで、前回読んだ作品とのつながりを感じました。
作者が残した、もう一つの「ピーター・パン」
余談ですが、この作品には物語の外にも素敵なエピソードがあります。
作者J・M・バリーは、『ピーター・パン』の権利をロンドンの小児病院であるグレート・オーモンド・ストリート病院へ寄贈しました。
現在もイギリスでは、この病院が『ピーター・パン』に関して特別な権利を持ち、その収益は子どもたちの医療に役立てられています。
100年以上読み継がれる名作が、今もなお子どもたちを支え続けていると思うと、とても温かい気持ちになります。
まとめ
子どもの頃は「空を飛ぶ冒険物語」としか思っていませんでした。
しかし大人になって読むと、
- 成長しないピーター
- 成長していくウェンディ
- 時間と死を受け入れるフック
- 反省して変わるジョージ・ダーリング
という対比が見えてきます。
世界中で愛され続ける理由は、子どもだけではなく、大人もそれぞれ違う立場で登場人物に共感できるからなのかもしれません。
私にとって『ピーター・パン』は、「永遠の少年」の物語ではなく、「成長すること」の意味を考えさせてくれる物語でした。
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